恋を知らない人魚姫。


愛海がピンクで、あたしが青で。

あの時、売店で願ったことが現実となった。


これは、櫻井くんが叶えてくれたこと?

……ううん、違う。

あたしがあえて、自ら叶えたこと。


今だ全く掴めない、彼の思惑。

あたしは上手く踊らされているような気しかしなくて。

だから、彼が思いもしないようなことをやってやろうと思った。


彼から貰ったものを、あたしが素直に愛海と付けるなんて思っていないはず。

愛海のケータイに付いたストラップを見て、驚けばいいと思った。

そして――。




その日のお昼休憩。

照りつける太陽から隠れるように、腰を下ろした日陰。

あたしはいつもと同じく、愛海と屋上で昼食をとっていた。

陽があたると地獄のようだけど、風の通りを邪魔するものは何一つないから日陰は涼しい。

もしかしたら、空調の温度設定が出来ない教室よりも、涼しいかもしれない。


「聞いて聞いて、たっくんも可愛いねって言ってくれたの!」

フォークとケータイを合わせ持って、嬉しそうに満面の笑顔で話しかける愛海。

その話の内容にヒヤリとしながらも、あたしも笑顔を向ける。