恋を知らない人魚姫。


並んだ机の一番隅に鞄を置いて、ケータイを開いてみる。

ほら……やっぱり連絡ない。

今日一日、こうして時々ケータイを見ているけど、彼から返事が来ることはなかった。

あたしは今日、すれ違ってもいない。
だけどお昼に愛海から聞いた彼の様子は、至って普通、いつも通り。

ハッキリ聞いて来ようか?って、愛海が言ってくれたけど、それは断った。

色んなことがあって、まだそれほど時間が過ぎていないのに、愛海に負担をかけさせるようなことは出来ない。

それに、来ないなら来ないで、もうあたしには興味がないって……そういうこと。

やっぱり、あたしのことが好きだとか、愛海の勘違いじゃないのかな……。

初めから自身があったわけじゃないけれど、“まさか”と思った気持ちさえ、なくなってしまいそう。

あたしはケータイをポケットに戻して、歩き出した。

あと二十数分。
来てくれないかもしれないけど、本でも読みながら待ってみようと思って。