恋を知らない人魚姫。


「やっぱウザいと思うよね! てか、愛が一番迷惑してるよね!」

すぐ傍で本人が聞いていると知らずに、続けられる会話。

ただでさえ、愛海の返事に参っているというのに、

「ね、本当はずっと嫌だったんじゃない?月城さんと仲良くしてるの」

愛海のクラスメートは、更にあたしを追い詰めるような質問をしてきた。

「愛ちん優しいからさ、仕方なく仲良くしてあげてたとか、そんな感じでしょ?」

ドクンッ。

大きく跳ね上がる心臓。

やだ……やめて。
そんな話、聞きたくない。

一歩、二歩と、ゆっくり後ずさる。

櫻井くんとのことがバレる前までは、本当に親友だと思ってくれていたと、信じてる。

それなのに、そんな質問やめて。

もし……もしも、愛海が“うん”と返事したりしたら、そしたら……。


「あ、あたしは……」


微かに聞こえた、愛海の声。

その瞬間、あたしは背を向け走り出そうとした。

だけど、

バサッ!

手が震えるあまり、抱えていた茶封筒を落としてしまった。