恋を知らない人魚姫。


「大丈夫?」

「あ、ありがと……」

愛海の細く白い手が、櫻井くんの大きな手のひらに触れる。

あたしはそんな光景から目を背けるように、しゃがんで落ちたストラップを拾い始めた。

やっぱり辛いし、見たくない。
でも、ふたりの邪魔をするつもりは……もうない。


「あっ!海憂ごめん」

あたしの行動に気づいた愛海は、せっかく立ち上がったのにすぐまたしゃがみこんだ。

それから無言で手を動かす愛海。

彼には見えないだろうけど、同じ目線のあたしにははっきり分かる。


愛海の顔は、今まで見てきた中で一番真っ赤。


セツナイ、サミシイ、クルシイ。
胸が締め付けられる気持ちは、相変わらず込み上げる。

だけど……。

「ふっ……」

あたしは小さく笑った。

告白すると話していて、その相手がいきなり現れて、びっくりするのは当たり前だけど、体のバランスを崩すくらい驚いた愛海が可愛くて。

顔を真っ赤にして、今にも泣き出しそうな愛海が……愛しい。