恋を知らない人魚姫。


「愛海、頑張って。応援してる」

「うんっ!」

同じような言葉を、前にも言った。

あの時は全くと言っていいほど、そうは思ってなくて。
頭の中で考えていたのは、言葉とは真逆のこと……。

でも、今は――。

「何を頑張んの?」

「!!」

背後からいきなり聞こえた声。

ビクッと肩が上がって、反射的に振り返る。

すると、真後ろに立っていたのは、櫻井くん。

「あっ……」

驚いたあたしは小さく声を上げて……その直後。

ガンッと何かぶつかった音と、バサバサと床に何かが落ちる音。

音のした方へと慌てて顔を向けると、

「った……」

顔を歪めて、腰をさする愛海の姿があった。
周りには、散乱したストラップ。

「大丈夫っ!?」

あたしと櫻井くんは、声をそろえて一緒に近寄る。

「あはは、バランス崩してぶつかっちゃった……」

言いながら立とうとする愛海に、あたしは手を貸そうとする。

だけど、先に手を差し出したのは……櫻井くんだった。