恋を知らない人魚姫。


からかわれるのは嫌だったけど、これはこれで……何だか困る。

言葉を発してくれないと、何を考えているのか分からない。
さっきの表情のこともあって、戸惑う気持ちばかり膨らむ。

沈黙が続けば続くほど、嫌でも考えてしまう目の前の人のこと。


『本当は話しけるつもりはなかったんだ。でも……』


あの言葉の続き。
それは一体何だったんだろう。

気になるけど、あまり触れたくない話題。

あたしは再び目線を落とそうとする……と、


「月城さん」


目の前の彼が立ち止まって、あたしの名前を呼んだ。

そのタイミングに驚いて、ビクッと反応する体。

あたしも足を止めると、

「どっち?」

櫻井くんの前には、二手に別れた道。

「あ、ひだ……」

素直に“左”と答えようとして、

「もう近くだから、ここでいい」 

慌てて言い換えた。