恋を知らない人魚姫。


「質問……?」

ふわりと生温かい風が、吹き抜ける。

櫻井くんは何か、確かめるようにあたしの顔をじっと見つめ、


「月城さんが人魚姫だったら、どうする……?」

「え……」

唐突すぎる質問に、あたしは目を丸くする。

「ほら、今朝愛ちゃんがこんな恋したいって言ったら、意義ありげにしてたじゃん。だから、月城さんならどうすんのかなって思って」

「あぁ……」

そんなところまで見てたんだ……と、頭の片隅で思う。


「あたしが人魚姫……だったら」

王子様と結ばれなきゃ、死んでしまう運命で。

それが、決定的になってしまったとしたら。


「王子様じゃなく、王子様を奪ったお姫様を殺すわ」


櫻井くんの目を真っすぐ見て、少し睨みつけるように言った。

……そう。
あたしの中での王子様は愛海で、隣国のお姫さまは櫻井くん。

それに気付いてなのか、気付かずなのか、

「やっぱ月城さんは面白いや」

櫻井くんは、クククと喉を鳴らして笑った。