恋を知らない人魚姫。


それに、もし万が一あたしの憶測が当たっていて。

櫻井くんに別れると言われてしまえば、それこそ終わり。


愛海と櫻井くんは結ばれて、ハッピーエンド。

でも、あたしはひとり……なんて、そんな結末、絶対に嫌だ。

だったら……。

さっきまでどうするか悩んでいた、その答えが自然と浮かぶ。


「あなたがここにいろって言うんなら、ここにいる」

「何だそれ。いきなりどういう風の吹き回し?」

肩の力を抜き、小さくため息をついて。
いきなり変わったあたしの発言に、櫻井くんは不思議そうな顔をする。

「別に。離してくれないんだからしょうがないじゃない」

あたしは目を逸らして、最もらしい返事をする……けど、本当は違う。


離してくれない櫻井くんの様子に諦めたわけじゃなく、彼の意識を愛海へと向けたくなかった。


少しでも愛海に疑われてしまった今、櫻井くんとこうして一緒にいるのは、リスクが高すぎる。

だけど……ここまで来たら、もう引き下がるわけにはいかないから。