恋を知らない人魚姫。


その笑顔は一瞬にして消えて、何だか気まずそうな表情。

俯き気味の愛海に、

「他に何かあるの?」

周りを気にして小声で聞くと、目だけをあたしに向けた。


2年以上も一緒にいれば、言葉にしなくても表情でだいたいの気持ちが分かる。

“言いたいけど、言えない”

愛海の今の気持ちは、きっとそんな感じで……。

「いいから言って?」

優しく言うと、愛海は迷いながらもこくんと頷いた。そして、


「クラスの子から、変なこと聞いたんだけど……昨日の放課後、図書室に行ってたって本当?」


言葉の終わり、俯いていた顔を上げて、真っ直ぐにあたしを見た愛海。

向けられたのは不安そうな顔で……息が止まりそうになった。


疑われてるのは一目瞭然。

一気に上がる心拍数。

頭の中は“どうしよう”って言葉でいっぱいで、激しく動揺していた。

だけど、

すがるような目をして、あたしから視線を逸らそうとしない愛海。

その表情を見ていたら、

「……うん。行ったよ」

あたしの口は素直に事実を伝えていた。