恋を知らない人魚姫。


愛海はあたしと一緒にいることよりも、櫻井くんと一緒にいることを選んだ。

放課後だけじゃなく、昼休みさえも。

それは心の奥で怖れていたこと。

実際にその時を迎えてみると、凍るように心が冷たくなって、大好きな愛海にイライラする気持ちまでも生まれて来た。

だけど、

「今日の放課後、あたし進路指導でね。昨日だった子が、昼休みに色々教えてくれることになって……」

申し訳なさそうに愛海が口にした理由は、想像していたものとは違う。

進路指導……?

そういえば先週、そんなことを言っていたっけ。

3年生のあたし達。
そろそろ希望進路もはっきりさせておかなきゃいけない。

じゃあ、櫻井くんと一緒に……っていうわけじゃないの?

「……そういうことなら」

安心したあたしは、愛海に向かって微笑む。すると、

「ありがとう」

愛海もまたホッとした様子で、軽く笑みを浮かべた……けど。