恋を知らない人魚姫。


でも、今日は何て言おう……。

授業中の教室。

滑るように喋る先生の英語が響く中で、あたしはそればかりを考えていた。

櫻井くんからの呼び出しに応えたはいいものの、愛海への上手い言い訳が浮かばない。

2日連続で一緒に帰れないとなると、さすがに「何があるの?」って聞かれちゃうよね。

でも、もしかしたら……。

櫻井くんのことが好きな愛海は、今日も居残りしようと考えているかもしれない。

そう考えると、都合がいいとか悪いとか関係なしに、胸がキュッと苦しくなった。


結局何も浮かばないまま、何も頭に入らないまま、英語の授業は終わって。

何やってるんだろ……あたし。

机の上でトントンと教科書をまとめながら、自分自身の行動に呆れて小さくため息を溢した時だった。


「月城さん」

背中からかけられた、珍しく棘のない柔らかな声。

何かと振り向くと、後ろに立っていたのはクラスメートの男子。

「呼んでるよ」

あごで教室の後ろのドアを指されて追って見ると、そこに立っていたのは愛海だった。