まだまだ残暑の厳しさが残る、八月最後の週。
コンビニに行こうと玄関を開けた秋文は、無言で目の前に立っている人影にぎょっとして立ち竦んだ。
それはここにいるはずのない人物…。
「あ、紋瀬…何で君がここに!?」
見ると、手には大きな荷物を持っている。
(ま、まさか…家出?)
秋文が口をぱくぱくさせていると、
「あんた馬鹿?」
呆れた口調で言い返された。
「はっ?」
「鬼が現れてから鏡を村まで取りに来る時間なんてないだろ。だからあんたと一緒に住むことにした。ここにいれば、嫌でもあんたに鬼が寄ってくるだろうし」
敵の鬼を探す手間が省けると、彼はすました顔でそう言った。
その言葉にきょとんとする。
(住む? 紋瀬が僕と?)
何だか話がおかしな方向に向かっているような気がするのだが…。
「本気か?八助さんや僕の父さんはこの事、知ってるのか?」
「当たり前だろ。学校の編入手続きや住民票の件なんかもあるんだ。未成年のオレが、親の承諾なしで勝手にできるわけないじゃないか。祖父とおじさんの間で話しはついてる…もしかして、あんた知らなかったのか」
「うっ…」
鋭い指摘に、秋文は言葉を詰まらせた。
「やっぱり馬鹿だな」
言って、紋瀬は口端を少し上げた。
あれ…それを見て秋文は驚く。
「何だ?」
「いや。お前、笑うんだなぁと思って」
「はぁ?あんたオレの事なんだと思ってるわけ?人間じゃないものを見るような目で見るなよっ」
怒った紋瀬はさっさと家の中に入っていった。
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