秋文は決意の目で相手を睨むと、一か八か鏡面に『封・鬼』と書いた。


「…これが僕の命だ!!」


血の指先が冷たい銀の表面を滑るように撫でる。

次の瞬間、彼を取り巻く周りの空気がピンと張り詰めた。


『汝の命、承知した。我、従うなり』


再び、あの声がした。

すると鏡から光の柱が、天を射す勢いで昇る。

「うわっ…何だ…これ…眩し…」

秋文は紋瀬を庇うように抱きしめると、薄く瞳を開けた。


びょうぅぅぅぅぅぅ。


境内の砂を風が激しく上空に巻き上げる。

その中に、何かの姿がちらりと垣間見えた。

だが、それは一瞬の出来事…伸びてきた腕のようなものが、相田の体から鬼だけを無理やり引き剥がす。

恐ろしい咆哮をあげながら、まるで鏡に引き込まれるように入っていった。

辺りに静寂が広がる。

後には意識を失った相田と、鏡が残るばかりだった。
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