本物とは性質が異なるのか、じわじわと鬼の触れた部分が服を焦がし、皮膚に到達する。

その熱さは全身の痛みへと変わっていった。

それでも鬼の下で秋文は必死に抵抗し、もがき暴れる。


《観念するんだな》


彼の体に馬乗りになった鬼は、秋文の眼球を手始めに奪おうと手を伸ばしかけた。

「やめ、ろ…」

秋文は咄嗟にその腕を掴む。

ドクン…

左目が熱くなった。

ドクン…

視界が赤く染まる。

「う、何だ…」

刺すような痛みが、鬼と目があった途端襲ってくる。

ドクン!!

心臓がこれ以上にないくらい、大きく跳ねた。


《あぁ…やっと見つけた…返して貰おう…我の…》


鬼の指が顔に触れた瞬間、

「触るなーっっ」

恐怖を振り払うように、秋文は叫んだ。

その声にギリッと唇を噛んだ紋瀬は、落ちていた鏡を拾いあげると鏡面を鬼に向ける。

「そいつから離れろっ!!」

ギラッ…反射した、銀の光が鬼の目を鋭く射抜いた。


《がはぁぁぁぁぁぁ》


苦しさに体を仰け反らせると、鬼は紋瀬の持つ鏡をたたき落とす。

そして、彼の体にその鋭い爪を振り下ろした。
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