「何してるんだ、早く外へ出ろ」

「!!」

表から紋瀬の声がした。

それが秋文を動かすスイッチを入れた。

入り口は一箇所しかなく、そこを塞がれてしまっているので秋文は脆くなった明かりとりの格子を蹴り破って危険を回避する。

「ここまで来い!!」

境内の中央に立っている紋瀬に導かれるまま、秋文は彼の所へ全力で走る。


《逃がさぬぞ!!》


追って来る鬼。

秋文たちとの距離が三メートルまで近づいた時、鬼の伸ばした手の先が激しい火花を散らした。


バチバチバチッッ…!!


発動するトラップ。

紋瀬の地面に仕掛けた五つの鏡の陣が、中央にいる二人の周囲を囲み、鬼の侵入を拒む。


《五鏡の防御陣とは、小癪な》


「急いで封じろ!!」

紋瀬は肩に掛けていたデイバックから、一枚の鏡を取り出す。

「封じたいのは山々だけど、僕は神主じゃないし正式な後継者でもないから無理なんだよ」

「あんたは血族だ。そんなにすごい気を全身から放っているのに、何が無理だ」

「無茶言わないでくれ!!」

「何もしないで最初から諦めるなんて許さないからな。やれよ…やれって言ってるんだっ!!」

紋瀬は一歩も譲らない。

《お前の体も魂も全て我に捧げよ》


「…」


その言葉に、熱くなっていた紋瀬ははっと動きを止めて鬼を見た。
.