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7月30日、夜。


今年も無事に祭りが終わった。

とりあえず今晩は境内のテントやイス、それからゴミの片づけを手早く終わらせる所までやったので、きちんと清掃するのは翌早朝ということになる。


「あー、疲れた」


秋文はゴロリと畳の上に寝転んだ。

埃と汗まみれで風呂に入りたかったが、一度こうやって横になるとしばらく起き上がれそうにない程、体が疲れていた。

学校やバイトでさえも、こんなに体力は使わないというくらい心身ともにヘトヘトだった。


(何で20代に入った途端、こんなにも疲れを感じるんだろうな…)


去年と同じことをしているはずなのに、疲れの度合がかなり違う。


(確実にオヤジへの階段を登り始めてるんだよな、これってきっと)


自分の考えが悲しくなってきて、秋文はタメ息をついた。

そのままぼんやりと天井を眺めていると、ふと相田の顔が浮かぶ。


(あいつ、どうしたんだろ…)


あれほど乗り気だった彼は祭りの期間、とうとう秋文の家を訪ねてこなかったのである。

それどころか、何の連絡もないままだ。

普段、大雑把な性格のわりにそういうところはマメで、ダメな時にはキチンと連絡をしてくるのだが…何か、特別な事情でもあったのだろうか。

何だか気になる。


「!!」


と、彼の前に突然、ぬっと缶コーヒーが差し出された。
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