フウッとため息を吐き、階段に視線を移そうとした時だった。











「えっ?」









視界の端に映った妙な人影。


伊勢が駆け抜けて行った生産棟の一番奥の廊下に……高校には似つかわしくない、小学生くらいの少女がこちらに向かって歩いて来ていたのだ。


なんで、こんな所に小学生がいるの?


それに、なんだか様子がおかしい。


薄暗い廊下の奥から、窓がある明るい場所まで歩を進めた少女を見て……私の心臓が、ドクンと音を立てたのが分かった。






頭の上から足の先まで真っ赤に染まったその姿は……もしかして、「赤い人」?






見ただけでそうだと分かる、異様な雰囲気。


まるで、その少女から、私を引き寄せようとする手が迫って来ているような不気味なものを感じる。


ど、どうしよう!


噂話じゃなかったの!?
それとも、誰かのイタズラ?


いや、イタズラだとしたら、誰もいないかもしれない廊下で、あんな女の子を歩かせるはずがない。


今まで見た事なんてなかったのに、なんで伊勢が「赤い人」の話をした日に現れるの!?


もしもあれが、本当に「赤い人」だとすると……私は振り返らずに校門を出なければならない。


少女は、こっちに向かって歩いて来てはいるけれど、私に襲いかかって来るような様子はない。


慌てて階段を駆け下り、踊り場に着いた時だった。