*5*
フシルの部屋は兵舎の最上階にあって、広々とした一人部屋だった。
殺風景で物が少なく、だから余計広く感じられた。
「粗末な椅子しかありませんが、どうぞおかけください」
そう言って、フシルは椅子をすすめる。
粗末とは言っても、流浪の民のエルマにとってはそれでも上等なものだ。
エルマの正面に座って、フシルは取り寄せたという菓子の包みを開いた。
中から出てきたのは、一見普通の焼き菓子だ。
だが、その香りには高価な酒のそれが混ざっている。
「ルイーネの貴族の間で最近人気の菓子だそうです。食べたことはおありで?」
「いや、ない」
エルマは首を振って、「どうもありがとう」と礼を言うと、焼き菓子を一つ手に取った。
口の中に放り込むと、香ばしい香りを振りまきながらもろく崩れて溶けていく。
そのなんとも言えない口どけに、エルマは目を見開いた。
「美味しい」
それを聞くと、フシルはエルマのカップに茶を注ぎながら、
「それはよかった」
と、はにかむように笑った。
フシルの部屋は兵舎の最上階にあって、広々とした一人部屋だった。
殺風景で物が少なく、だから余計広く感じられた。
「粗末な椅子しかありませんが、どうぞおかけください」
そう言って、フシルは椅子をすすめる。
粗末とは言っても、流浪の民のエルマにとってはそれでも上等なものだ。
エルマの正面に座って、フシルは取り寄せたという菓子の包みを開いた。
中から出てきたのは、一見普通の焼き菓子だ。
だが、その香りには高価な酒のそれが混ざっている。
「ルイーネの貴族の間で最近人気の菓子だそうです。食べたことはおありで?」
「いや、ない」
エルマは首を振って、「どうもありがとう」と礼を言うと、焼き菓子を一つ手に取った。
口の中に放り込むと、香ばしい香りを振りまきながらもろく崩れて溶けていく。
そのなんとも言えない口どけに、エルマは目を見開いた。
「美味しい」
それを聞くと、フシルはエルマのカップに茶を注ぎながら、
「それはよかった」
と、はにかむように笑った。