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 御者台のラグの背中を馬車の中から見つめながら、エルマはディネロの話を聞いていた。



 エルマが捨てられた理由は、概ねカームの推測通りだった。



 ただ少し違うのは、エルマを捨てたのがエルマの母ではなくディネロであったことだ。



ディネロは兵に命じてエルマを殺させようとした母に、自分が殺すと偽って、エルマを城から連れ出したらしい。



 あまり帰りが遅くなっても母に怪しまれるので遠くにも行けず、だからといって国内に頼る者もなく。



そもそも、緑の髪はウィオンの証で、この大陸に緑の髪は少ない。



国内の誰かにエルマの身分を偽って預けても、髪色から容易に正体が知れるだろう。



ルイーネからエルマを隠すには、敵国シュタインの領内にエルマがいるのが一番だったが、ルイーネ王子であるディネロがシュタインに入り込めば、ディネロ自身が危ない。



 散々考えた末、結局、国境に捨てるしかなかった。