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 村のとある家の中。

粗末な作りの椅子にエルマとラシェル、そしてカルは座っていた。



 目の前には、寝台に横たわる老人。

病にかかった村人の一人だ。



 ギドとの対面の後、病にかかった村人に話を聞きに行こうとラシェルが言い出したのだ。



 当然エルマは止めようとしたが、ラシェルはまったく聞き入れず、結局エルマも同行することになり、それならばと近衛のカルもついていくことになった。



 メオラも行きたがったが、

「大勢で押しかけては病人に迷惑だから」「エルマたちが病にかかって動けなくなったときに看病のできる人が必要だから」とラグが言いくるめて館に留めた。

ラグとテオはエルマとは別行動で村の中を見回り、刺客らしき人物がいないかを調べている。



「……病の原因について、心当たりはありませんか」



 エルマが老人に尋ねた。


「病にかかる前、なにかいつもと違うことはしましたか。いつもはしないことをしたとか、変なものを食べたとか」



 しばらくの間、老人はなにも答えなかった。

土ぼこりの舞う居間に、重苦しい沈黙と老人の家族の心配そうな息遣いが降る。



 やがて、老人のくちびるがかすかに息を吐き、枯れた木の葉がざわめくようなかすれた声を絞りだした。



「……な、い。いつもの、ように……朝起きて、畑仕事を、して。……日が暮れてから、家に戻って。……寝て。起きたら、体が重くなって、いた」