その瞬間、澪ちゃんの顔がぐん、と近付いてきて。
『チュッ』という音と共に、真ん中分けのせいで露なおでこに、柔らかな感触が降り注ぐ。
「いっ………えぇぇぇ!?」
今朝の永太といい、え、沖縄ってキスの習慣あんの?んなわけないよね!?ここ日本だもんね、ジャッポーネだもんね!
「永太から前に教わったんよ、いなぐが、可愛くなる魔法。」
アンのヤロォ!何キザなこと澪ちゃんに仕込んでんだよ!この子なら純粋に信じるじゃん!ドキドキするだろ!
「べーるったみ?」
『べーる』は嫌だの意味だから、つまり嫌だったか聞いてます?
そんなワンコみたいな可愛い顔で尋ねられたら、答えひとつしかなくね?
「い…嫌じゃない。」
その返答に満足したのか、澪ちゃんは目をすっと細めて、優しく弧を作った。



