第三幕のラストシーン、絶望するタンホイザーの前に亡くなったエリザベートの棺が運ばれるシーンに入る。



ラストシーン、タンホイザーが息絶え、だけどエリザベートの愛がタンホイザーの魂を救済する、という大事なシーン。



………なのに、澪ちゃんは棺が運ばれてきても倒れない。



それに対し、観客が少しずつざわざわ、とざわめき出す。



「み……澪ちゃん?どうしたんだろう。」



私も現実に戻り、オロオロと隣の永太を見てしまう。



でも、永太は心配どころか、笑っていた。



「…………さあ、君のエリザベートを迎えに来なさいよ、タンホイザー。」



永太が楽しそうに呟いた瞬間、澪ちゃんは動きにくそうな青のベルベッド生地の服で走り出し、舞台から降り、客席の方へ降りてくる。



一体…………何事!?



更に騒然とするホールの中、まっすぐ、ドアの傍で立ち見していた私の元へ走ってくる澪ちゃん。