あの夏が終わり、秋を迎え、寒い冬を過ぎて進級し、今年もまた、暑い夏がやって来た。
渡辺悠莉18歳、高校三年生。
再び、常夏の楽園へと、足を踏み入れていた。
「悠莉、早く歩きなさいよ!全く、やまとんちゅーは体力が無いですね。」
「とか言って、永太だって今は都内在住の癖に!」
那覇空港で相変わらずの言い合いをしている私達。
永太は、東京本校の付属大学に推薦入試で受かっていて、なんと、今年の春から私の家庭教師をやっている。
何も聞かされてなかったから、ドヤ顔でうちにやって来た時はそりゃもう驚いた。
夏休みスタートと同時に、こちらの大学の説明会を兼ねて、帰省の永太にくっついて沖縄にやって来た私。
美容の専門学校に通う澪ちゃんもまた夏休みらしく、空港には初心者マークの外れてすっかり板に付いた運転で迎えに来てくれることになっている。
「あー、澪ちゃん久々だから楽しみぃ。相変わらずイケメンなのかな?こっちのイケメンはそろそろお腹いっぱいだし、イケメンチャージしなきゃ。」
嫌みったらしく永太に言ってやると、変わらぬ鬼畜を発動し、私の頭蓋骨を握力全開で鷲掴みにする永太。
「さて悠莉、このまま鼻フックされるか謝るか、どちらか選択肢をあげましょうか。」
「あだだだすみませんでしたぁぁ!」
そんなの、謝る以外の選択肢無いじゃんか!



