資料館を出る頃には、時刻は16時半を過ぎていた。
私達はもう一度だけ慰霊碑の前に立つと、どちらが何を言うもなく、手を合わせ、目を閉じる。
今の平和が余りにも当たり前のことすぎて、また、ああやって実際に戦争を経験した人も時代の流れと共に減っていて、こういうことを知れる機会が少なくなっていることを痛感した。
「澪ちゃん、今の幸せを、日常を、感謝しなきゃいけないね、私達。」
「だーるなぁ。悠莉ぬあびる通りやっさー。」
いつもは頭空っぽな私だけど、今日こうやって学んだことは、私なりに東京の友達に伝えなきゃいけない、そう思った。
「わん、けーったら永太と雅治んかい、ちゅーぬ話しなきゃ。伝えなきゃいけねーらん。」
今日一日を共に過ごして学んでくれた澪ちゃんが同じ気持ちでいてくれることに、私は少しの幸福感を抱いた。



