お祭りも終盤に差し掛かり、私、澪ちゃん、雅治の三人は会場から少し離れた海岸のテトラポットに腰を掛けて花火を眺めていた。
エイサーを踊り終えた永太が車で拾ってくれる約束になっており、合流地点がこの海岸となっている。
「あー…夏だねぇ、今更ながら。」
団扇を扇ぐと磯の香りが鼻腔を擽る。
沖縄の空はどこまでも高く、花火の咲いていない場所には眩いばかりの星達がキラキラ、と控えめに自己主張していた。
「花火も綺麗だけど、星空も綺麗なんだろうなー。」
「うん。うちなーぬフシすらや自慢だしよ。なんたって、ニヌファブシが見えるんやっさー。」
左隣で垂れ目を弧の形にして空を眺める澪ちゃんが、重低音のその声で呟く。
「ニヌファブシって?」
「あー…北極星ぬくとぅをうちなーぐちでやそう呼んでいるんやっさー。」
『ニヌファブシ』は『北極星』か。なんだか、耳に優しく残る響きだな。



