「高村……っ!」 って、名前を呼ぶけれど 「違うでしょ、仁菜ちゃん」 その甘い声は、さらに耳の近くから入ってきて 私をクラっとさせる。 「名前、何だったっけ?」 ニヤリと笑う彼はもう、 いつもの意地悪な彼に戻っていた。 「ほら、もう1回呼んでみ?」 立場は完全に逆転。 「……早く行かないと遅刻しちゃうから……っ」 そんな言い訳は 「そうだね。 早く呼ばなきゃ、ここから出れねぇよ?」 ぎゅっと抱きしめられた手によって 阻止される。