いつもボールに柔らかく、優しく触れる男っぽい骨張った手。 それが無理に細い針をつまんでいる。 ふるふると震えていて、自身を刺すんじゃないかと不安になる。 うー、と唸りながら眉間に皺を寄せている姿はなんだか少し可愛らしくてクスッと小さな笑いが漏れた。 バカみたいなそんな状況でもあたしの胸は高鳴って、愛しさで溢れる。 タガが外れた途端これか。 ……思っていたよりずっと、あたしはあいつのことを想っているらしい。 fin.