ポケットダーリン


解ってる。…うん、解ってる。

色恋も枕もしてきていいって言ったくせに、こんなの…矛盾してるって解ってる。


でも今日はダメ…。

今日はなんかダメなの…。

なんでだか分かんないけど、今日はダメなんだよ…。



あたしだけを愛してほしい。

あたしだけを見てほしい。

ねぇ、お願いだから、独りにしないで…。



それに、なんで?
叶人と一緒にいるためにあんなに卸したんだよ…?

どうしてすぐ行っちゃうの?

あんな額、本当は払えるか不安なんだよ…

締め日までにあんなに稼げるかも分からないのに卸しちゃったんだよ…?

隣にいてほしかったから…

なのに、なんで?どうして…?



「あっ、あ…俺も一杯頂いていいっすか?」


ヘルプの言葉にゆらりと顔を上げる。

「はぁ?」

空気の読めない新人ヘルプをギロリと睨んだ。

おどおどするその姿が癇に障る。


嗚呼、もうダメだ…


ガシャーン!!

テーブルを蹴り倒し、同時にグラスが割れる。

拍子に転んだ新人ヘルプが、尻餅をつきながらあたしを見上げる。

「トークもロクに出来ねぇ奴が単価上げしてんじゃねーよ!!空気も読めねぇクソガキがホストしてんじゃねー!!」



あたしは身体の中に溜まった黒いものをぶちまけた。

完全な八つ当たりだ。