それでも、この再び芽生えた気持ちの行き場が最初からないって事を考えると、切ないなぁなんて思ったりもする。

和泉くんはどういうつもりで優しくするんだろうなんて期待しては、図々しいと自分で否定して。
和泉くんは親切心でしてくれてる事なのに、それに対して恋愛感情なんて抱いてしまっている自分を反省して。

毎日、自分の恋心を押し潰すのにかなりの気力を使っている気がする。
シンデレラはいいな。ご主人様に恋する事はなかったんだから。

「――大野」

目の前で私が作ったカレーを食べる和泉くんを眺めながらこっそりため息をついたところで、名前を呼ばれてる事に気づく。
ため息がバレたかと思って慌てて顔を上げると、顔をしかめた和泉くんがいた。

「電話、さっきから鳴ってるけど」
「え……あ、本当だ」

指摘されて初めて気づいた着信。
そんな大きな音に設定してないとは言え、着信音よりも和泉くんの声に反応する私の耳はどうなんだろう。

自分の耳の性能に呆れ笑いを浮かべながら手にとった携帯。
和泉くんにごめんねと謝りながら席を立って、表示されている元カレの名前に気づく。

……嫌な予感しかしない。

しまった。荷物を取りに来いっていう催促かもしれない。