まとまったお金ができるまでここに置いてもらえる事を本当に感謝しているから、できる限りお手伝いさんとか家政婦っぽく振舞いたいのは本音だ。
それを考えると、ご主人様と同じテーブルで向き合ってだなんて、どこのドラマのお手伝いさんも家政婦もしてないしとんでもないとも思うけど。

ご主人様の和泉くんが誘ってくれたんだから、そこはいいよねと自分で自分を納得させる。

自分の食事を運んで席についたところで、壁にかけてある時計が八時を知らせる鐘を打った。
ボーンという低い音が部屋に響く。

「和泉くんってアンティークが好きだったりする?」
「別に嫌いじゃない程度だけど。なんで?」
「あの時計、アンティークっぽいし、ここのマンションの造りもそんな感じがするから」
「この部屋、元々はモデルルームなんだよ。
俺の勤める会社が建てたマンションで、モデルルームとして使ってた数部屋は後で社員に優遇された家賃で貸し出されるんだ」
「へー、そうなんだ」
「俺が部屋を探してた時に、空きがある賃貸ではたまたまここが立地条件よかったからここにしただけ。
外観とかはあまりこだわりないし、部屋はシンプルだったから」