和泉くんの不器用な優しさに気づくのは、もしかしたら私が人の顔色を必要以上にうかがいすぎたりするせいなのかなとも思うけど。
そういう優しさが垣間見える度に、完璧に見える和泉くんの不完全な部分というか、隙みたいなものを見れた気がして嬉しかった。

いつもはクールで無表情な和泉くんがたまに見せる優しさや微笑みが、嬉しかった。

「ご飯できてるけど、和泉くんはいつも何時に食べるの?」

スーツを部屋着に変えて自室から出てきた和泉くんに聞く。

白いTシャツに羽織っているのは、スポーツメーカーのジャージ。
ズボンも同じモノだった。

高校の頃のジャージ姿が一瞬浮かんで、消えていく。
あの頃と同じようで、でも違うんだと実感した瞬間だった。

なんか……こんな姿を見せてくれるなんて、気を許してくれてるみたいで嬉しくなるし、普通に可愛いなぁなんて事も思うけど。
そんな事口走ったらどうなるか分かってるから心の中でこっそり思うだけに留める。

「あまり決まってないけど。できてるなら食べる」
「お腹空いてる?」
「ああ。今日忙しくて昼休み取る時間なかったから」
「えっ、じゃあすぐ用意するね」
「別にゆっくりでいいよ。数分違ったところでどうこうなるわけじゃないし」
「でも、雇い主の和泉くんがお腹空いたって言ってるのにノロノロ準備してたら家政婦失格だから急ぐ」