「は? なんで俺が不快になるんだよ」
「こいつ随分くつろぎやがってって感じで……」
「……もし俺がそんな小さい男だったら、そもそも大野に一部屋貸したりしてないだろ」
「そうだけど……最初から気抜いた格好すぎるかなって」
「格好なんかどうでもいいし」
「そう? でも、シンデレラの継母はシンデレラにボロボロの服着せてたから」
「おまえがシンデレラ体質だとしても、俺はシンデレラの継母じゃない」

大野が落ち着ける格好でいい、そう言われて黙って見ていると、和泉くんは軽くため息をついて私を見た。

「俺にまで気を使うな。そのクセ直す約束だったろ」
「あ、そうだったよね。ごめんなさ……」
「それも。すぐ謝るのも禁止」

じろっと見られて思わずびくっと肩を揺らすと、和泉くんはそんな私にもう一度ため息をついてからふっと笑った。
そのわずかな微笑みに、胸が温かくなる。

口調は厳しいし、顔も無表情だけど、やっぱり和泉くんは優しい。
今の約束にだって、和泉くんの優しさがにじみ出ているように思える。

だって、気を使うなだとか、すぐ謝るなだとか。
そんな約束したところで、和泉くんはこれっぽっちも得しないのに。