「成長してるじゃない。
昔は自分の事だけ考えて行動してたのに、今は和泉の事考えて、助けたい気持ちを自分の中だけで留めてるんだから」
「それは……だって迷惑になりたくないから」
「ああ、でもそれ、莉子の場合は成長じゃないかもね。
昔は自分の感情のまま動けてたのに、今じゃすっかり色んなモノ抱え込む癖がついちゃってるし。
まぁ、どっちがいいかって聞かれると難しいけど」

そう言ってパスタを食べる佐和ちゃんを見つめてから、ふっと笑って目を伏せた。

「抱え込んでも、今の方がいいよ。
私が抱え込んでいる限り、和泉くんにあんな顔させないもの。
もう……困らせたくない」

あの時……手紙を差し出した時。
和泉くんは驚いた顔をした後、ツラそうに目を細めて眉を寄せた。

今にも涙がこぼれるんじゃないかってくらい、悲しそうな顔だった。

そして。
ごめん、受け取れない。絞り出すような声でそう言った。

私はあの時の和泉くんの顔を、生涯忘れない。

ぎゅっと奥歯を噛みしめて目を伏せていると、そんな私に佐和ちゃんがふぅとため息をついた。