「え、そうなの? まだ離れて五、六年なのにそんなに変わるもん?」

驚いてそう聞いた佐和ちゃんだったけど、私が答えるよりも先に「まぁでも留学なんてしたんだから多少は変わるのか」と自己解決してしまう。

「家も確か資産家だったし、色々あるのかもね。外見は?」
「面影はある感じかな。
佐和ちゃんの知ってる和泉くんを無表情にして、もう少しシャープな顔立ちにした感じ。
でも、顔立ちが整っているのは相変わらずだしモテそうだけど。
たまに笑うと、甘いマスクって言葉も似合うし」
「ふーん。あの、常にニコニコしてた和泉が無表情とか想像もつかないなぁ。
高校二年生で留学したっきりだし、成長遅い男子なんて特にそれからが成長期なんだろうし、顔つきも多少変わるもんなんだろうけどなんか不思議」

そう言いながらようやくパスタをフォークに巻き付け始めた佐和ちゃんを見て、私もフォークを持つ。

テーブルに到着してから随分放置されたパスタをフォークにくるくるしていると、佐和ちゃんが、和泉くんと何か話したのかを聞いてくる。

「家庭の事とか仕事の事とかかな。あまり突っ込んだ話しちゃ悪いからそういう話はしてないけど、会社員だって言ってた」
「まぁ、十中八九、自分ちの会社の社員だろうけどね。
留学までしてるんだから、向こうで色々学んでるだろうし、建物の作り方とか外観とかに生かしてるんじゃない」