向かいの席に座る佐和ちゃんにそうすごまれて、思わず笑ってしまう。

別にここは佐和ちゃんの行きつけのお店ってわけでもなさそうだから、顔を立てる必要もないのだけど。
ここまで言ってくれてるんだし、第一、佐和ちゃんが私の制止を払いのけて私の分まで注文してしまうから、もう料理は目の前なんだし。

ここは素直に甘えようと、いただきますと手を合わせた。

「今仕事してないって、派遣期間が終わったって事?」

そう聞く佐和ちゃんに、苦笑いを返した後、つい昨日和泉くんにしたような説明をする。
元カレの浮気から始まって、会社からクビを言い渡された挙句、自分の部屋からも追い出されてしまったところまでの一連の流れをサラっと。

途中から佐和ちゃんの眉間にシワが寄りっぱなしだって事は気づいていたけど、とりあえず話し切った後、困るよねと笑うや否や、佐和ちゃんがカっと目と口を大きく開いた。

「ありえない! なにその彼氏と女……っ!
百歩譲って、ダメ男と別れられたのはいいよ。どうせそんな男といくら一緒にいたところで泣かされるだけなんだから、浮気してくれてよかったよ。
でも、その後の事全部何なの?!」

ありえない!ともう一度大きな声で言う佐和ちゃんに周りから視線が集まるから、何でもないんですーと笑顔で周りを見てから佐和ちゃんに顔を寄せる。