昔の和泉くんだったら、気を使ってそんな事ないよとか慰めるような事を言ったのかもしれないけど。
今の和泉くんは、どんな時でも事実をそのまま言葉にする感じがする。

だからそれを怖がって目を伏せたけれど。
和泉くんは意外にも私を否定したりはしなかった。

「親不孝ってわけではないだろ。今まで散々手伝ってきたんだから」

まさかの擁護発言に驚いて顔を上げると、いつでも観察しているように鋭い目をした和泉くんが私を見ていた。

「大野と家族の事は知らないけど、俺が見る限り大野を薄情だとも思わないしむしろお人よしすぎるとすら思う。
会社の女が八方美人だとか言ったのも、誰にでも親切に対応するからって事だろ。
そんな大野が距離を置きたいと思うのは余程だし、俺はそれを親不孝だとは思わない」

はっきりとそう言った和泉くんに、すぐ返事がでてこなかった。

和泉くんの言うように、和泉くんは私と家族の事を深く知るわけじゃない。
五年ぶりの再会だし、私自身の事だってよく分かっていないハズだ。

それでも、私を認めてくれている気持ちが伝わってきて胸が熱くなった。

そんな風に言ってくれたのが嬉しいのに、すごく嬉しいのに、それを声に出せなくて息苦しさを感じる。
嬉しいって感情が大きすぎて胸を塞いでいるような、そんな感じだった。