「おまえ、今日からどうするつもり? 泊まるあては?」
「とりあえず仕事は派遣会社からの連絡待って、部屋はどこかホテルの予定……」

泊まるあてを聞かれて、ホテルって答えるのは解答として間違っている気もするけど。

というか、地元なんだから普通だったら実家に戻ればいいだし、和泉くんに突っこまれそうなんて思っていると予想通りの突っ込みをされる。

「実家は?」
「あー、えっと……数年前にお兄ちゃんが結婚して実家に住んでるから、なんか居場所なくて」

和泉くんの顔がしかめられたのに気づいて、すぐに笑って説明する。

「お嫁さんもね、すごくいい人だし、居場所がないなんて私の勝手な思い込みなの。
ただ……悲しいけど、私にとって家はくつろげる場所じゃないから、実家に戻るのはなるべく避けたいの。
育ててもらっておきながらこんな事思うの、親不孝だと思うんだけど……」

こんな風な考え方をしている私を、和泉くんは軽蔑したり勝手だと思ったりするかもしれない。
そう思って、目を伏せながら言った。

和泉くんの瞳に失望みたいなものが広がっていくのを見るのは嫌だったから。
最も、和泉くんは元から私に何の期待も寄せてないだろうから、失望なんてしないのかもしれない。

でも、軽蔑されるのは嫌だから。