「自殺するのは勝手だけど、俺の生活範囲内はやめてくれない?」

自殺なんて物騒だな。というか私の後ろで自殺しようとしている人がいるのか?と驚いて振り向こうとした時。
取り出した携帯からストラップが外れて地面に落ちてしまった。

結構前からつけているモノだし、元々丈夫な作りじゃなかったから、外れたのはもう数度目だ。

ああ、もしかしたらこのストラップは自ら外れて、彼とは別れた方がいいって私に忠告してくれていたのかもしれないなぁと今更気づく。

日本で一番有名なテーマパークに行った時に買ったのは、ガラスの靴のストラップ。
そのテーマ―パークに恋人同士で行くと別れるってジンクスがあるけれど、そこでガラスの靴を買えば別れなくて済むっていうのは有名な話だ。

だから私も買ってみたけれど……結局その別れのジンクス通りになってしまった。

ストラップを拾おうとした私より先に、後ろにいた男の人の手がガラスの靴を拾い上げる。

地面から視線を上げると、ひとりの男の人が立っているだけで。
恐らくさっきの自殺うんぬんを言った男の人の視線は私を捕えていた。

……ん? ちょっと待って。
と言う事は、自殺うんぬんは私に向けて言われた言葉だったって事?

驚きから声を出せずにいる私に、男の人は怪訝そうに顔をしかめる。