コーヒーが嫌いだったらどうしようと恐る恐る聞くと、本に向けられていた視線がまた私に戻ってくる。
わずかに細められている瞳が不機嫌を表しているように思えて、慌てて、その前にキッチンを借りてもいいならだけど、と付け足した。

和泉くん。目が悪くなったんだろうか。
五年前よりも確実に目つきが怖くなった。

というよりも、目つきだけじゃなく、人間的に尖った。
以前の柔らかい雰囲気は完全に姿を消していて、まるで別人みたいだった。

視力の問題じゃなくて、性格から変わってしまうような何かがこの五年間にあったって事だろうか。
普通は年とると丸くなりそうなものなのに。

そんな事を思いながら見ていると、和泉くんが、好きにすればと答える。

「シュガーとかミルク使うならシンクの反対側の引き出しの一番上に入ってるから。
お湯は電気ケトルで沸かして。カップはシンク上の吊り棚。適当でいいから」
「うん。ありがとう……。和泉くんは何か入れるの?」
「俺はシュガー半分」