「お風呂、ありがとう。
湯船まで入らせてもらっちゃったんだけど、大丈夫……?」

一日くらい大丈夫だから、と一度は断ったのだけど、そんな何度も泣いた顔をそのままにしておく気かと言われて、勧められるまま入らせてもらった。
入ってみると湯船にお湯まで張ってあって、ここは遠慮した方がいいのかもと思ったけれど欲望には勝てずにつかってしまった。

一日色々あって疲れてたのもあってか、かなり長風呂になってしまった事も謝ると、リビングに置いてあるソファで本を読んでいた和泉くんは、チラっと私に視線を移した後、また本を読み始めた。

「別に。入るためにお湯張ったんだし」
「いつも張るの?」
「たまに。男の一人暮らしで毎日わざわざお湯張るなんて、相当な風呂好きじゃなきゃしないだろ」
「そうなんだ……」

ごめんね、と謝ると、別に大野のためじゃないと、予想通りのそっけない返事が返ってくる。
いちいちそんな反応に傷つかなくなったのは、再会してまだ数時間だけど、今の和泉くんに慣れてきた証拠かもしれない。

元からの図太さのおかげもあるのかもしれないけど。

「なにか飲むなら冷蔵庫の中のモノ適当に飲んでいいから。500のペットは直接飲んでるヤツだから、それ以外なら」
「あ、さっきコンビニでインスタントコーヒー買ってきたんだけど……和泉くんも飲まない?
コーヒー、飲める?」