陰湿な嫌がらせ。
その言葉を聞いた奏一くんが、何を思ったのが苦笑いを浮かべて私と目を合わせる。

多分、私を無視した会社の女子社員だとか、バーに呼び出してまでイヤミを言った坂下さん、そしてここに押しかけてまでして私に文句を並べた岩上さんを思い浮かべて笑ってるんだっていうのがすぐ分かったから、私も同じように笑う。

「え、なに? もう何かされたのか?」
「莉子は不幸な事を何でも引きつける体質みたいだから、割と何でも経験済みだよ。
そういう嫌がらせも、俺も何回か目の当たりにしてる」
「ああ、でも本当に昔からそうだったかも。
高校ん時も結構色んな女子から呼び出しくらってたもんな」
「……それ、和泉くんと仲良くしてたのが原因だって分かってる?」

まさか分かってないのかと思って聞くと、半分くらいはと返される。
謙虚に見せて自信満々な答えに思わず笑ってしまった。

でも、和泉くんってこういう人だ。
何でもできて、それを自分でも分かってる。
だけど、それを認めてもうぬぼれているだとか鼻にかけているようには思えないから、周りの人みんなが和泉くんを好きだった。

もう人望って辞書の項目には、和泉くんの名前を出してもいいんじゃないかと思うほど。