三万もするって知りながら、まるでコンビニの買い物袋でも持つかのように運んじゃう奏一くんも、そんなお酒を差し入れとして持ってくる和泉くんも。
やっぱり少し私とは住む次元の違う人なのかもしれないと実感して落胆してしまった。

そういえば、和泉くんのお父さんは大きな会社の社長さんなんだっけ……。
もしかしたら奏一くんのお父さんも役職とかに就いてて、奏一くんも同じようなレベルの育ち方をしてきたのかもしれない。

三万円をコンビニ袋みたいに扱えるような育ち方を。

「ほら、おまえ女子に告白されても全部片っ端から断ってただろ?」

並々に入っていたハズのシャンパンだけど、和泉くんのグラスだけもう半分以上が消えていた。
だからかよく話しかけてくる和泉くんに、最初のうちは相槌を打っていただけだったけど、奏一くんの話題になったものだから思わず食いついてしまう。

「え、そうなの? 中学時代、やっぱりモテてたの?」

奏一くんの餌にすぐに引っかかった私に、和泉くんがにやっと笑いながら答える。

「モテてたよなー、奏一は。顔いいし頭いいしクールだしで、他校の女子からも告白されてたし」
「それはおまえだろ。毎月のように誰かしらに呼び出されてるって噂になってたくらいだし」
「いやいや、俺はただ告白しやすいタイプだっただけで、おまえの隠れファンはかなり多かったと思うけど。
おまえ、一見近づきにくいから告白できないけど好きだった子は多いと思うけどなー」
「今更どうでもいい話だろ」
「そうかもしれないけど、莉子はそんなおまえの彼女なわけだから、色々覚悟しておいた方がいいかと思ってさ。
ほら、結構陰湿な嫌がらせする女もいるだろ」