『昨日の事、あれも俺の世話だと思ってくれればいいから』
ショックを受けた言葉が頭に浮かぶ。

言われた時は私だけが勘違いしてたのかって、奏一くんはそんなつもりだったのかってショックだったんだから。
そんな風に言おうと思った。

けど、本当は心の中ではそんな事を思っていたのかと知ったら、奏一くんへの文句なんかどこかへ消えて、代わりに愛しさがもくもくと胸いっぱいに広がっていった。

なんでもクールな顔して器用にこなせそうなのに、実際はそうでもないのかもしれない。

「いつもはそこで終わってたんだ。勉強も他のヤツらからの信頼も、俺が勝手に諦めてそこで」

なのにおまえは……と、奏一くんが私を見て困り顔で微笑む。

「適当にかわそうとした俺を捕まえて真正面から向かってきた。
俺の逃げ道を塞いで、まっすぐに俺を見て好きだって言ってくれた」
「だって……本当に好きだから」
「そんな莉子だったから、手を伸ばしたくて堪らなくなったんだ。
今までそんな気になった事もなかったのに、俺の一挙一動に素直に反応してくれる莉子を見てるうちに、捕まえたくて……欲しくて堪らなくなった。
けど、嘘をついてる自分を知ってたから今更自分勝手になる事もできなかった」

そう言った奏一くんは少し笑って続ける。