そんなものこの地球上には存在しないんじゃない?
本気でそんな風に思って聞いたけど、奏一くんはそんなわけないだろって顔で呆れる。
「中学で初めて孝広と同じ学校になったんだ。
勉強面でも運動面でもそれなりに自信はあったけど、孝広は俺の上を軽々と越えてった。
同級生だけじゃなく、他の学年や教師からも、学校中のヤツらから慕われてる姿を目の当たりにして……自分との差を思い知った」
「……なんか意外。奏一くんでも卑屈になったりするんだね」
図星だったのか、不貞腐れたような顔を返される。
「悪かったな。おまえが思ってるより多分俺は小さい男なんだよ」
不機嫌にそう言った奏一くんはその後少し黙ってしまったから、素直に言い過ぎたかなと心配になってしまう。
沈黙に不安が募って、奏一くん?と肩に手で触れると、そっと視線を向けられた。
じっと見つめられて胸が跳ねる。
「莉子の言うとおり、どうせ勝てないと思って卑屈になってた。
莉子の事に対しても。
だから、一度抱いた後も本当の気持ちは隠して仕事の一環だと思えなんて言ったんだ」



