「和泉くんじゃないって言われた時は驚いたけど、でも気持ちが落ち着いたらどうでもいいやって思えた。
奏一くんは、単純すぎるって笑うかもしれないけど」
チラっと見ながら言うと、奏一くんは複雑そうな顔をして微笑んでいた。
単純すぎるって本当に思っていたのかもしれない。
「だから、クレープが食べられなかったりゾンビ色が嫌だって言ったり、思い出の中の和泉くんとは違ってたけど気にならなかったし、そのままの奏一くんを受け入れてた」
「……なんの話だ」
それから、本当の和泉くんはクレープが好きだとか、ゾンビ色も食べちゃう事を話すと奏一くんは笑って。
よく腐った色したモンなんか食べられるな、と呆れたように言った。
そして、少しだけ黙って……落ち着いたトーンで話し出す。
「俺、昔から本当に欲しいモノは欲しいって言えなかったんだ」
「昔って小さい頃からって事?」
「物心ついた時からずっとそうだった。
多分、手を伸ばしたところで無駄だって諦めるクセがついてたからだろうけど」
「奏一くんが手を伸ばして届かないモノなんてあるの?」



