「そうだ。あの話。
奏一くんが和泉くんじゃないって無意識に気づいてたかもって話」
「ああ」
「奏一くんの言うようにね、奏一くんと和泉くん、違う面がたくさんあって、一緒に暮らす時間が長くなるにつれてそういうところがたくさん見えるようになった。
だけど、気にならなかったし気にも止めてなかったって言ったでしょ?
私はきっと、奏一くんが誰でもよかったんだと思う」
説明不足だったのか、奏一くんは顔をしかめて私を見ていた。
分かりやすい言葉を意識しようとしたけれど、私が知っている単語で奏一くんの知らないものはないだろうと思い直して、気持ちをそのまま言葉にする。
私の想いはきっと伝わるハズだから。
奏一くんなら分かってくれるって、どこか安心している自分に気づいて嬉しくなった。
「途中までは勘違いしてた。
だけど、途中からは奏一くんが和泉くんでも違っても、関係なくなってたの。
思い出の中にいる和泉くんじゃなくて、ここにいる奏一くんを好きになってたから。
だから、奏一くんの嘘なんてどうでもよかったの」
奏一くんは驚いた顔をしたけれど、そのまま続ける。



