気付かれてないとは思ってなかったけど、奏一くんはいつもポーカーフェイスだったし、まさかこんながっつり気づかれてるとも思わなかった。
恥ずかしく思いながら聞くと、奏一くんが呆れ顔で笑う。

「あれだけ素直な反応されて気づかないヤツなんかいないだろ。
俺が少し優しくするだけで嬉しそうに顔赤くして……そういう素直なところが可愛くて仕方なくなって、気づいたら好きになってた。
それで……自分の欲望のままに、俺を孝広だって信じて疑わない莉子をそそのかして俺のモノにしたんだ」

目を伏せながら言う奏一くんを少し見つめてから、なんだか悲しい気持ちになってきてしまった。
奏一くんは、私がただ幸せを感じてここで過ごしていた間、ひとりで嘘を抱え込んでツラかったんだと感じたから。

「自分の事を悪くばかり言うね。
私の自己犠牲のクセが移ったのかな」
「おまえに対してだけだよ。それに、おまえとの事も自業自得なだけで、自己犠牲の精神で悩んだわけじゃない」
「でも、その嘘の元は、奏一くんの優しさがあったからだよ。
奏一くんが泊まる場所のない私を可哀想だと思ってここに置いてくれたから、その時から嘘が始まったんでしょ?
だったら奏一くんが嘘をつかなくちゃならなくなった原因は私にあるよ」

明るく言った私を、奏一くんは信じられないとでも言いたそうな顔で見てから、はっと顔を歪めて笑った。