なんで一言、欲しいって言ってくれないの……?
ソファに座った奏一くんの前に立って、じっと睨むように見下ろすと、傷ついたような眼差しが返ってきた。
奏一くんは確かにポーカーフェイスがうまいけど……瞳だけは感情を隠せていない。
自己嫌悪を浮かべる瞳は、私が睨んでる理由を、自分の嘘が原因だと勘違いしてるのかもしれない。
「出て行くならそれでもいいって……奏一くんは私が出て行くって言ったら、それをすんなり受け入れるの?」
「……ああ。俺には止める権利なんかない」
「やっぱり和泉くんを選ぶって言ったら受け入れるの……?」
「……ああ」
「なんで……私の事が、好きなんでしょ……?!」
奏一くんはなんで私が声を荒げたのか分かっていないみたいに驚いた顔をした後、まっすぐに私を見て答える。
「好きだよ」
「さっき……和泉くんに会ってた時、私、和泉くんにキスされた」
この話をしたらムキになってくれると思ったのに、奏一くんは少し黙った後、「そう」と呟いただけで。
本音を口にしない奏一くんに、我慢できずに怒鳴るような声で言う。



