天気の心配までして傘を渡してくれた奏一くんには、焦りだとか不安は感じなかった。
だけど、もしかしたらそれは私に変な心配させないように奏一くんが気を使ってくれただけで、本当は不安だったの?
私がどんな結論を出すのか、少しは気にかけてくれてた……?
本当の気持ちが知りたくて探るように見ていると、奏一くんが苦笑いを浮かべる。
「ポーカーフェイスは得意だから。
それに、俺が気にしてようが不安を感じていようが、莉子は俺の事なんか気にしないで自分の好きなようにすればいい」
「え……?」
「騙してた俺を許せなくてここを出て行くって決めたなら、それでもいい」
「なに、それ……」
「莉子の自由に決めればいいから」
リビングの方に歩きながら言う奏一くんの表情が見えなくてイライラする。
何を考えてそんな事を言い出したのか分からなくて。
もしかしたら私のためだとか思ってるのかもしれないけど、そんなの奏一くんらしくない。
そんな自己犠牲な優しさ、奏一くんじゃない。
それは私の専売特権だ。
そして奏一くんは、いつもそんな私をダメだって叱ってくれてたのに……なんでそれを奏一くんがするの?



