誰にでも優しくて、人気者だった和泉くん。
学校中の女子にモテてた和泉くん。
私が初めて本気で好きになった人……。

マンションまで、ゆっくりと和泉くんの事を考えながら……和泉くんへの想いを抱えながら歩いた。

そして、マンションのエントランスを抜けて奏一くんの待つ部屋の鍵を開ける。
部屋に鍵がかかってなかった事に驚きながら中に入ると、音で気づいた奏一くんが玄関まで出てきてくれた。

嘘をついていた事を申し訳なく思っているのか、泣き出しそうな微笑みを浮かべていた。

「おかえり。随分早かったな」
「鍵、かかってなかったけどどうしたの? いつもは部屋にいてもかけてるのに」

不思議に思って聞くと、奏一くんは驚いた表情を浮かべた後、それを自嘲するような笑みに変える。

「すっかり忘れてた」
「どこか具合悪いの? そんな事一度もなかったのに……。
もしかして、そんなに気になってたの……? 私が外で何を話してるのか……?」

まさか。
そんな思いで聞いたけれど、奏一くんはわずかに微笑んでそれを肯定した。

「でも、だって……あんなに落ち着いた笑顔で送り出してくれたのに?」